2016年11月23日

民朗の戦争映画ベスト10

既に投票が始まっている、ワッシュさんの毎年恒例企画【戦争映画ベストテン】に今年も参加いたします。以下が私のベストテンです。尚、戦争映画は余り好んで観るタチではない為、正直意外性・面白みのないラインナップかも知れません。
それではどうぞ。

1.サウルの息子(2015年/監督:ネメシュ・ラースロー)
2.夜と霧(1956年/監督:アラン・レネ)
3.戦場のピアニスト(2002年/監督:ロマン・ポランスキー)
4.鬼が来た!(2000年/監督:チアン・ウェン)
5.ジョニーは戦場へ行った(1971年/監督:ダルトン・トランボ)
6.戦争のはらわた(1977年/監督:サム・ペキンパー)
7.M★A★S★H(1970年/監督:ロバート・アルトマン)
8.生きるべきか死ぬべきか(1942年/監督:エルンスト・ルビッチ)
9.野火(2014年/監督:塚本晋也)
10. プライベート・ライアン(1998年/監督:スティーヴン・スピルバーグ)

選定した理由としては、端的に言っちゃいますと”トラウマ”を深く植え付けられた順です。『M★A★S★H』や『生きるべきか死ぬべきか』は所謂コメディ映画でトラウマを植え付ける様な類の作品ではないですが、忘れ得ない作品となっているのでランクイン。
それではいかに短評をば。

1.サウルの息子(2015年/監督:ネメシュ・ラースロー)
かつてのナチによるユダヤ人絶滅作戦において「こんなことがありましたよ」という事実をリアルに語り尽した傑作。そこには通常のホロコーストを描く映画で登場するヒーローも、予期せぬ救済者も、何もない。只管に人間が虐殺される様を主人公・サウルの一人称視点から捉える。余りに残酷な現実に一筋の光が示されるラストシーンに心が震えました。
以前にした批評はコチラ



2.夜と霧(1956年/監督:アラン・レネ)
『サウルの息子』がオールタイムの一位に選出されるまでは、私の戦争映画の不動の一位は本作でした。アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の過去と現在をカメラは淡々と捉える。映画の最後のナレーション「私たちはある国の、ある時期における特別な話と自分に言い聞かせ、まだ消えぬ悲鳴に耳を貸さない。」という一文が、いつまでも頭に残っています。人種・国籍に関係なく、自身も胸に虐殺の種を秘めていることを自覚させてくれる傑作ドキュメンタリー。



3.戦場のピアニスト(2002年/監督:ロマン・ポランスキー)
第二次世界大戦末期のワルシャワ・ゲットーで生き延びようとする一人のピアニストを描いた戦争映画。本作で素晴らしいのは「音楽」の使い方。劇中のゲットーで、ドイツ兵がユダヤ人の人たちを街中で躍らせて笑いものにしたり、ユダヤ人の労働者を寒空の中で歌わせたり、とにかく音楽を貶めようとする非道い描写がある。一方で、ネタバレになりますが余りに有名なシーンなので言っちゃいますが、終盤で主人公が無人のゲットーの中で、あるドイツ将校にショパンのバラード第1番を弾き、将校は感動の余り主人公を見逃す。
音楽が人種に関係なく感動をもたらす素晴らしさ、それは逆説的にその様な素晴らしいものを戦争は根こそぎ破壊してしまうことでもある。(主人公はゲットーから逃れて以降、一切ピアノが弾けない。空想の中でのみ演奏に浸っている)



4.鬼が来た!(2000年/監督:チアン・ウェン)
これはもう、観てくれとしか言えません(そういう企画では無いですが)。説明不要の問題作。コメディとホラーの振れ幅は自己の映画歴で最大級、観終わった後はとにかく呆然としてしまったことを強く覚えています。



5.ジョニーは戦場へ行った(1971年/監督:ダルトン・トランボ)
戦場で目、鼻、口、耳、四肢を失い、他者と全くコミュニケーションが取れない状態で延々と生かされる青年、ジョニーを描いた反戦映画。生き地獄という言葉はこの映画にこそ相応しい。五感で唯一触覚のみが残っているジョニーのおでこに、看護婦がクリスマスの夜にキスをするシーンが切ない。
余りにトラウマだったのか、観た翌日から謎の高熱に見舞われたこともあり、非常に印象深い作品です。



6.戦争のはらわた(1977年/監督:サム・ペキンパー)
骨太の傑作を作り続けた名匠、サム・ペキンパーによる戦争映画。そこで描かれるのは正に男の美学。仲間を助けるためには自分の命をも賭ける主人公をどこまでもヒーローとして、保身・出世のために部下を平気で見捨てる男はどこまでも卑劣な愚か者として。本作は戦争自体を批判しているのではなく、戦争を利用して自分の欲望を満たそうとする卑劣漢を批判しているのですね。これは個人的には本当に強烈な視点でした。



7.M★A★S★H(1970年/監督:ロバート・アルトマン)
群像劇の名手、ロバート・アルトマンが作った戦争コメディ映画。こちらも『戦争のはらわた』と同じく、戦場の現場で働く人間を誇り高いプロフェッショナルとして、安全圏で偉そうにふんぞり返る上司を無能な阿呆として描きます。ただ、その展開は全編に渡り思い『戦争のはらわた』と違い、爆笑コメディ映画となっています。“戦場で働く人たちは尊敬するけど、戦争を起こすこと自体は馬鹿げてるよね”っていう姿勢はとにかく痛快でニヒリスティックで、一度嵌ると堪りません。



8.生きるべきか死ぬべきか(1942年/監督:エルンスト・ルビッチ)
こちらも『M★A★S★H』と同じく爆笑コメディ映画。所謂なりすましコメディであり、戦争映画が苦手な方でも問題なく観られるでしょう。とにかくナチをおちょくり通す内容になっており、これが世界大戦真っ只中の42年に制作されたという事実が信じられません。



9.野火(2014年/監督:塚本晋也)
戦争末期のレイテ島で、「死にたくない」その一心で彷徨い続ける男を描いた塚本監督渾身の一作。塚本監督お得意のグロテスクな描写が冴え渡っており、死んでもこの戦場には行きたくなと思わせてくれるトラウマ生産映画。しかし、これ実際に日本兵に起きたことなのですよね。戦争の是非とか云々は置いておいて、「戦争には絶対に行きたくない」という気持ちにさせてくれる稀有な作品。行きたい方はお先にどうぞ。「You Got Your Gun !」



10. プライベート・ライアン(1998年/監督:スティーヴン・スピルバーグ)
戦場におけるリアリズムの極致。公開されて早20年が経とうとしているのですね。しかし冒頭のノルマンディー上陸作戦のリアリズムは、現代でもそうそう越えられないのではないでしょうか。機関銃の弾が飛び交い、迫撃砲が彼方此方で着弾し、爆音が鳴り響き、兵隊の四肢は飛び散り内臓は零れ落ち、数秒前まで隣にいた仲間が次の瞬間には物言わぬ骸と化し、降伏した敵兵をも無慈悲に射殺してゆく。戦争で生死を分かつのは単なる”運”ということを明確に描いた傑作です。



(おまけ)
今年は何といっても『この世界の片隅に』が公開した年です。本作をランキングに加えようかとも考えましたが、上記10作品が余りに私にとって重要な作品なので、泣く泣く選外としました。とにかく『この世界の片隅に』も傑作なので、まだ観ていない方は映画館に行きましょう!


posted by 民朗 at 19:17| ランキング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする